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APOLLO一級建築士事務所 黒崎敏

 

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vol.5

千代田区二番町にある瀟洒なオフィスの書棚から取り出したのは、自身の著書『新しい住宅デザインの教科書』。ページをめくると、「ナイトリビング」「ボディラウンジ」など、イメージしやすく解説された住宅事例の数々──。今回訪問したのは、「デザインの第一歩は考えを言葉にすること」と語る建築家・黒崎 敏さんです。

 

黒崎敏

1994年、明治大学理工学部建築学科卒業後、積水ハウス株式会社東京設計部、

FORME一級建築士事務所を経て、

2000年、APOLLO一級建築士事務所を設立

著書に、『可笑しな家』『夢の棲み家』『新しい住宅デザインの教科書』『最高に楽しい家づくりの図鑑』など

 

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http://www.kurosakisatoshi.com

 

聞き手/株式会社フリーダムコーポレーション代表取締役

    「東京リノベ」主幹        谷村泰光

 

 

 

──飛び抜けて多くの実績をお持ちですよね。

 

黒崎 現事務所を立ち上げてから100棟程つくってきました。常時20~30の案件が動いています。クライアントさんも20代後半〜70代前半と幅広く、たくさんの事例から「最近はこういったデザインが好まれるようになった」「部屋とは呼べないようなミニマムな空間を求められている」など、ライフスタイルや価値観の変化などが読み取れますね。しかし、クライアントさんのなかには自分の考えをうまく話せない人もいらっしゃいます。ですから、徹底して会話するなかで「つまりこういうことですか」「たとえばこんな感じですか」と、伝わりやすい言葉に置き換えてご要望を引き出すようにしています。

 

──デザインのイメージを伝えるのは、まず言葉ということですか。

 

黒崎 言葉を交わしながら、まず相手の脳髄にイメージを建築していくんです(笑)。それが鮮明であればあるほど共感が得られますから。たとえば、私たちは、忙しいDINKSたちがベッドルームでコミュニケーションをとったり、ホテルのようなカウチソファーでナイトキャップを楽しめたりする空間を「ナイトリビング」と呼んでいます。また、「ボディラウンジ」は、バスルームでストレッチができたりバスコートで夕涼みができたりと、水まわりでカラダと対峙できる空間を指します。いずれも、複数で快適に過ごすことを目的に機能拡張させた事例ですが、「ナイトリビング」「ボディラウンジ」というような言葉にすることで、どなたにもイメージが伝わりやすいと考えています。

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ナイトリビング ボディラウンジ                (写真 : 西川公朗)

 

 

──「リビング」や「バスルーム」など、従来の枠組みでは捉えきれない住空間が生まれてきているのですね。

 

黒崎 そのような住空間を私たちは「サードプレイス(第3の居間)」と呼んでいますが、まったく新しく生まれた空間ではありません。もともと日本の住宅の特徴であった居心地の良い中間領域が進化した住空間なんですよ。

 

──居心地の良い中間領域とは?

 

黒崎 かつての日本の住宅には縁側、広縁、かまど端、三和土(たたき)といった室内でも室外でもなく、「何をする場所」と決められない空間がありました。これらの空間は、使う人も使う目的も問いません。つまり、「何でもできる場所」という曖昧さが心地良く感じられることを、みなさんよくわかっていらっしゃったのです。ですから、昨今の部屋を区切らないスタイルのワンルームマンションも、中間領域のひとつだと思います。狭い住宅で工夫しながら生活するなかで生まれた空間は、昭和以前から日本の住宅にあったワンルームの典型である「茶の間」への回帰といえるかもしれません。

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GRAPH(東京都渋谷区千駄ヶ谷) (写真 : 西川公朗)

 

 

──中間領域がもっとも顕著に見られるのが東京だと思うのですが、都市に住む魅力はどこにあると思いますか。

 

黒崎 たとえば都市ならではの眺望が挙げられますね。人間は、ある程度コンシャスな空間から広域な視野が開けるときに心地良く感じるといわれます。タワーマンションの窓からの眺望のように、狭いところから広いところを見わたすというような、絶妙な距離感をつくっているのが東京でしょう。景色を切り取ったり、生け捕ったりする例が東京には多い。一点集中してトリミングする建築の力も大きいと思います。いわば、住みやすい空間を「縁取る力」ですよね。

一方、時代の新しい波がつねに生まれているのも東京です。私は自分で波をつくり出していくことにも前向きですが、すでにある波に自分をうまく乗せていくほうが、やりたいことが確実に展開できると思っています。

 

──「すでにある波に乗せていく」という考え方は、まさにリノベーションですね。

 

黒崎 その通りです。新築も魅力はありますが、それまで住んでいた人の気配やぬくもりなど、コントロールできないものが残っているほうが実は結構よかったりする。「ここになぜ窓があいているのか、よくわからないけれど何かいいよね」みたいな(笑)。もしかしてモノをつくるということは、いかんともしがたい何かがないと、すべて自分の思い通りになったらどこかバランスを欠いてしまうものなのかもしれません。人間も、生まれもった容姿は自分で決められないところからスタートし、個性を受け入れながら、みずからの特性として生かそうとしますよね。もともとある条件の下からはじめることはとても重要だと思います。

そもそも、私は新築もリノベーションだと捉えています。敷地や隣家や街並みとの関係性、土地が持っている空気感など、すでにあるものに価値を挿入し最大化させれば、新築であっても改修であっても本質はリノベーションですから。リノベーションとは「新たな価値を与えていくこと」で、現状の価値がなぜ不十分なのかを見きわめるのが私たちの仕事です。従来の価値と新しく与えた価値の振り幅が大きければ大きいほど、クライアントさんに感動してもらえると思っています。

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JAM(東京都目黒区柿の木坂)  (写真 : 西川公朗)

 

 

──黒崎さんは「建築の基本は住宅」という考え方をお持ちですが、学生時代より海外のいろいろな人の暮らしに触れた経験からでしょうか。

 

黒崎 当時はインターネットもメールもない時代でしたから、学校の中だけだとどうしても世界が狭くなります。暇を見つけては広い世界を見てやろうと、旅に出ていました。学校の勉強をはるかに超えるインパクトがあったのはやはり海外でした。欧米は30代になってお金が稼げるようになってからでも行けるだろうと思って回避し、アフリカやアジアを中心に歩き回り、人間の生活や家族の原点みたいなものをひたすら体感しました。

すべての人が平等に決められるのが家の設計や暮らし方でしょう。そこから汲み上げられる生活の様式や哲学が世界中に存在しています。「それぞれの住まいがいかにして成り立っているか」「現地に溶け込み、違和感がないのはなぜなのか」は密度の高い住宅設計の修練を積まないとわからないだろうと、おぼろげながらも感じました。

建物の外側だけをつくったり、顔の見えない人に対して設計したりしていては見えない何かがあると思います。その何かとは、衣服や家具などのように、肌に触れたり手に触れたりするものの延長線上にある、人の感覚です。住宅設計において忘れてはならないのは、「人のためにつくる」ことにほかなりません。

 

──黒崎さんの数多くの事例のすべてに共通するのは、「人のためにつくる」という発想だったのですね。

 

インタビューを終えて

まずは相談レベルでも実際に土地を見に行き、現地の情報をインットしおく。すると、ある日突然アイディアが浮かぶ。こから「クライアントさんのイメージにどれだけ近づけられるのか議論を始める。そんな現場発が「サードプレイス(第3の居間)」などのユニークな考え方を生み出したのでしょう。7年ほど前、たまたま前を通っ港区白金台の住宅「BINO」のデザインに興を持ち、建築家の名前を施主さんに教えてもらったこと初めての出会いでしたわず立ち止まり、つくった人を知たくなる。

黒崎さんの住宅デザンには、人を惹きつけるチカラが感じられます。

(谷村泰光/2013年10月取材)

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写真右より黒崎さん、谷村

 

 

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